
セッション概要
アクセシビリティは「配慮」の先にある新しい視点を必要としています。キュレーターの田中みゆきさんとろう者の伊藤芳浩さんと共に、当事者の存在と声を大切にした真の共生社会について考えます。
開催日時
2025年3月18日(火)20:00-21:20
接続先
※終了しました。ご参加をありがとうございました。
内容
私たちは「アクセシビリティ」という言葉をよく耳にします。駅にエレベーターを設置する、映画に字幕をつける、Webサイトを音声読み上げに対応させる―。しかし、本当の意味での「アクセシビリティ」とは何でしょうか?
このワークショップでは、アクセシビリティの概念を「リプレゼンテーション(代表・表象)」という新しい視点から捉え直します。例えば、ろう者が出演する映画。手話を使う俳優を起用すれば、それで十分なのでしょうか?実は、カメラワークや演出にも「聞こえる人」を前提とした無意識の偏見(エイブリズム)が潜んでいるかもしれません。
私たちの社会には、まだ気づかれていない「できない」ことがたくさんあります。しかし、それは当事者に能力が「ない」からではなく、社会の側が「できる」環境を用意していないだけかもしれません。
本ワークショップでは、キュレーターの田中みゆきさんとろう者の伊藤芳浩さんをお迎えし、アクセシビリティとリプレゼンテーションの関係性について、具体的な事例を交えながら考えていきます。「アクセシビリティ」は単なる技術的な対応ではなく、社会の在り方そのものを問い直すきっかけとなるはずです。
どのような立場の人も、自分らしく生きられる社会をつくるために、私たちに何ができるのか。「心のバリアフリー」という言葉の先にある、新しい共生社会の姿を、参加者の皆さんと一緒に探っていきたいと思います。
専門的な知識は必要ありません。普段から「誰もが暮らしやすい社会」について考えている方はもちろん、アクセシビリティについて初めて学ぶ方も、ぜひご参加ください。
タイムテーブル
・オープニング・開会挨拶
・登壇者紹介
・テーマ導入・問題提起
- アクセシビリティとリプレゼンテーションの基本概念説明
- なぜこのテーマが重要なのか
・メインディスカッションテーマ(予定):
- アクセシビリティとリプレゼンテーションの関係性
- エイブリズムについて
- 合理的配慮について
- アクセシビリティを多角的に見る必要性について
- 具体例を交えた課題と解決策の提示
・質疑応答
・参加者からの感想共有
・まとめ・クロージング
【パネリスト】

「障害は世界を捉え直す視点」をテーマに、カテゴリーにとらわれないプロジェクトを企画。表現の⾒⽅や捉え⽅を鑑賞者とともに再考する。2022年ニューヨーク⼤学障害学センター客員研究員。主な仕事に、「ルール?展」(21_21 DESIGN SIGHT、2021年)、「⾳からつくり、⾳で遊ぶ。わたしたちの想像・創造を刺激する『オーディオゲームセンター + CCBT』」 (シビック・クリエイティブ・ベース東京、2024年)など。主な書籍に、『誰のためのアクセシビリティ?』(リトルモア)、『ルール?本 創造的に⽣きるためのデザイン』(共著、フィルムアート社)がある。

生まれつき聞こえない日本手話を第一言語とするろう者。NPOインフォメーションギャップバスター理事長。社会の仕組みや製品・サービスの企画から設計、開発、評価まで、あらゆる段階に当事者が参画することの重要性を訴え、障害者とビジネス、人権、雇用の分野で啓発活動を展開。情報へのアクセスやコミュニケーションにおける様々な障壁の解消に向けて提言を続けている。デジタル庁「サービスデザイン関連ガイドライン改訂に係る検討会」構成員も務める。TEDxTIUスピーカー。著書に『マイノリティ・マーケティング』(ちくま書房)、『差別のない社会をつくるインクルーシブ教育』(共著、学事出版)がある。
※本イベントは、手話通訳・文字通訳をご用意しています。その他の配慮が必要な方は、お問合せフォームからお知らせください。
主催者
WBW2025 UDチーム
参考URL
問合せ先
投影資料
▼田中さんの投影資料
https://www.slideshare.net/slideshow/the-well-being-week-2025-72f7/276926138
▼伊藤さんの投影資料
https://www.slideshare.net/slideshow/the-well-being-week-2025/276925959
参考資料
▼エイブリズムを乗り越えた事例「ろう者の表現者を育成する「デフアクターズ・コース」」
▼エイブリズムがアライに及ぶ事例「見えない壁:聴覚障害者の情報保障が軽視される社会構造」
https://note.com/embed/notes/n305fc688d50b
▼リプレゼンテーションについて解説した記事「リプレゼンテーションとは?私たちの「見え方」が未来を変える」
https://note.com/embed/notes/n17706ae4fb66
アーカイブ動画 (1年間限定公開)
Q&A
※ワークショップ内で回答しきれなかったものを掲載しています。
Q:エイブリズムは、本当にアンコンシャスバイアスの1つでしょうか?
A:エイブリズムの表出のされ方はさまざまあると考えています。 お話したように、ヘルパーや移動支援が働くことを想定していないなど、明らかに制度として組み込まれている場合や明確な差別もあれば、アンコンシャスバイアスとして無意識にもたれる偏見や態度も含まれると思います。 二つ目のコメントが途中だったので、ご質問の意図をうまく汲めていなかったら申し訳ありません。(田中)
無意識の偏見という側面に着目すれば、エイブリズムもアンコンシャス・バイアスの一つとして捉えることは可能だと思います。別の方が指摘されたように、エイブリズムは無意識的なものだけではなく、社会に根深く存在する「意識的な差別」や「構造化された排除」も含むため、アンコンシャス・バイアスに収まりきらない、より広範で根深い問題という面もあると思います。つまり、無意識だけでなく、意識的で制度的な側面も併せ持つという意味で、アンコンシャス・バイアスと重なる部分もあれば、そうでない部分もある、というのが適切な整理かもしれません。(伊藤)
Q:どのような条件が、リプレゼンテーションの「真性」を決めるのでしょうか?
A:重要なのは、リプレゼンテーションが行われる主体や構造で、内容ではないとわたしは考えます。 リプレゼンテーションとして望ましいナラティブがあると考えてしまうと、まずそれが誰にとって望ましいのか、誰が決めるのかでフィルターがかかってしまい、新たなステレオタイプやバイアスを生みかねません。正しいナラティブなどないと思います。偏見を助長するのは、それが当事者ではなく、健常者が求めるストーリーになってしまっている場合、つまり、構造に歪みがある場合です。 最近のauthentic representationの議論も、当事者の声に基づいて、これまでの固定化されたイメージではない、多様で繊細な声を届けることに重きが置かれています。(田中)
コメントにもあったように、どのようなリプレゼンテーションに触れるかによって、視聴者や読者が多様な人々に共感を抱くこともあれば、逆に偏見を助長することもあります。「真性」なリプレゼンテーションとは、単に表現が正しいか否かだけでなく、「当事者性が尊重されているか」「多様性が適切に表現されているか」「意図が誠実か」といった総合的な基準で判断されるべきだと考えます。(伊藤)